2007年7月18日水曜日

”万全”

”万全”という言葉、最近あまり聞かなくなったが、今日偶然にも、中越沖地震で「微量」の放射能が漏洩したとされる柏崎原子力発電所に関する報道で、テレビ画面に映し出された資料に記述されていた言葉である。 何事も100%完璧、完全という事は無いであろうが、万全を期して、不測の事態に備えるのは、社会活動とりわけ社会基盤に関わる企業には当たり前のこととして求められる。 ”万全の策を施したが、想定外の強い地震でだった”という意味の資料ではないと思いたい。

業績を上げることや利益を生み出すことは、企業存続の根幹だが、不測の事態に「万全を期して」備える事は決して相反する事ではない。 鉄道、電力、ガス、道路、などなどハードインフラは言うに及ばず、保険、年金、金融などソフトインフラ企業も同様であろう。 「万全」、空ろな響きにならぬよう、再認識しておきたい言葉である。 

平成19年7月18日

2007年7月6日金曜日

アップルの戦略 - その2

6月29日予定通りiPhoneが北米にて発売になった。 その後順調に販売を伸ばし、2007年中に1000万台売るとの目標も現実味をおびてきた。

1月にSteve JobsがiPhoneを大々的に発表して以来アップルウォッチャー達が、いろいろな事を言ってきたが、実物の出来は果たしてどんなものか、日本では未発売であるが故に、私は残念ながら現物を見ていないが、大いに期待を寄せていた。 予想通り、6月29日の発売日直後のメディアの評価は、ほぼ例外なくiPhoneに高い評価を与えている。 あるメディアは発売直後にiPhoneをばらばらに分解して其の部品メーカー名を公表している。 

私は、日頃どの様に素晴らしいマーケッティングであっても、其の製品が前宣伝通りに作られていなければ話にならないと思っていた。 シスコやベイ(ノーテル)などのネットワーク企業は、マーケッティングで将来の夢を語り、其の時点では、其の夢を満たすには不十分な製品を販売してきた。 少し言い過ぎかもしれず、表現は悪いが、謂わば”逃げ水マーケッティング”とでも言おうか。 

ネットワークインフラ機器と消費者用端末機器とは違うのであろうが、iPodに始まったアップルの手法は夢を直ぐに実現にしてみせる、一般消費者が"こんなものあったら凄いな。 3年先かな5年先かな?”と漠然と考えているものを、直ぐ市場に出す、それも仔細な機能を前宣伝通りに実現してみせる、これはもうIT機器ベンダーの模範というか、従来のIT機器ベンダーの仕事の進め方を根底から覆すほど革命的な手法といえるのではないか。

今回、製品の出来栄え、日程、出荷管理と其の情報管理体制などに象徴される、今回のiPhoneの素晴らしい成功は、アップルのビジョン、透視力(人間の趣向、IT市場動向、ネットワークインフラ動向など等)、柔軟な発想を鼓舞しての製品企画、開発、設計、製造、マーケッティング、ロジスティックス、そして其の全工程を通して管理するプロジェクトマネージメント、これらが一枚岩でなければ、このような芸当は出来なかったように思う。 嘗て、何かの記事でアップル社内には、Jobsの余りに強すぎるカリスマ性に対する不満がくすぶっているというようなことを読んだ記憶がある。 私にはアップル社内の事は判らないが、少なくとも、今回の件で見る限り、アップル社内は、一丸となってiPhoneを世に出した、社内統制の素晴らしさを見せ付けてくれた。 アップルが今後共、消費者を興奮させる機器を出し続ける限りは、この社内結束は維持されるのだろう。

いずれにしても、技術力なくしては、製品化の実現は成し得ないが、最近のアップルのもう一つ素晴らしいところは、標準部品を最大限活用するという事ではないかと思う。 これは単に、コストを抑える効果だけではなく、製品化する工程を短く出来る、詰り、当初のスケジュールを制御しやすいという事に繋がる。 余談になるがソニーのプレーステーション3は、専用部品に拘ったが故に出荷時期が遅れたり当初予定の機能の一部が間に合わなかったりしたとの世評だ。

高い信頼も、一夜にて崩れ去る事が日常的に起きている忙しい現代に、アップルが築き上げつつある期待と信頼を何処まで強化・維持出きるか、アップルに関する興味は尽きない。

平成19年7月6日

一休:iPhone発売の翌日6月30日にはもうこのような映像がYouTubeに載った。投稿者名はvirtualmagician(http://www.virtualmagician.com)。手品師の作品とか。 中々面白い。人気上々のiPhoneを表す一齣だ。

2007年7月4日水曜日

アップルの戦略

少し古い話になるが、6月15日付けのThe Street.Comのサイト, News & Analysis:Technology欄にIvy Lessnerというレポーターが書いている”Microsoft Enlists Allies for Apple Fight”というタイトルの記事を大変興味深く読んだ。 

この記事を読んでいて、1980年代初頭に、だるま型のデスクトップコンピュータ、マッキントッシュ(日本で通称ダイナマック)が日本市場に投入された時のことを思い出した。  当時のパソコンの標準はIBM主導で、7インチ・5インチの磁気ディスクを使いながら、画面上で奇妙な文字列をいじくりまわさなければパソコンを操れない状況であった。 そこへ、ダイナマックがアイコンを使って登場、その操作性の良さ、発想の斬新さに度肝を抜かれた。 その間、ソフトも大分進化し、基本的な対立構造は、IBM PC対アップル、マイクロソフトも当初はMulti-Plan(Exellの前身、方やIBMはLotus1-2-3)などを含めてMac対応を優先していたような気がする。 爾来、どのPCでもアイコンが標準となり、今日に至っているが、当初から人間とのインターフェースの良さを最優先にしたMacの使い勝手の良さは、後付で無理やりソフのトコードをアイコン化したPCを寄せ付けないものがあったように思う。

私自身も、ダイナマックが日本市場に出現した折、直ぐに飛びつき、Macinntosh Plus、SEなどと立て続けに購入し、90年代半ば位までMac一辺倒であった。 然しながら90年代半ば頃、まさかアップル内のごたごたが、製品のつくりにも反映された訳ではあるまいが、Macユーザは頻繁にその画面上にダイナマックならぬダイナマイトの絵(Macの動作が固まってしまう、所謂フリーズ状態)を見ることになる。 この時点で、歴史的なWindows95の登場などにより、マックの優位性が薄れていった時代が暫し続いたのは、未だ記憶に新しい。 個人的なことだが、私自身も職場がIBMのパソコンを使っていたことや、ダイナマイトを見せられる事に聊かうんざりしていた事などもあり、マックからPCへの乗換えを決めた。

前置きが長くなったが、アイコンを使った操作性の良いソフトと、チョットかわいく親近感を覚えるハードウェアにより、パソコンに対する概念をひっくり返した当時のアップルが、30年近く経過した今、再び、主導権を取ろうと、大きな手を打ってきた事に動揺するPC連合を、マイクロソフトが再糾合しようとしている今回の構図のように見える。 追われる立場のマイクロソフトには、やや焦りが有るようにもみえる。 上述した様に、私はマックを離れて12-13年になるので、最近のマックの使い勝手の良さを体験として持ち合わせず、”Safari”などの素晴らしさも理解していないので、余りアップルを語る資格はないが、今回のアップルが仕掛けた戦略は、iPhoneという超小型ポケット型パソコンを市場投入しつつ、ブラウザはWindowsユーザでも自由に使えるようにするという、俗な表現だが、iPhoneをもって城の外で攻撃を仕掛けながら、ブラウザで場内本丸への進路を確保しつつあるような戦国絵図のようにも見える。 

繰り返しになるが、伝えられているところの、iPhoneは、本格的な携帯型ポケットパソコン(パソコン基本機能、無線LANアクセスを含むネットワークへのアクセス機能、携帯電話機能、メディアプレーヤ機能)を有しているようなので、競合PC他社は暫し追いつけないのではないかと思われる。 ここでアップルもWindows同様に、そのOSのインターフェースを開示すれば、更に大きなインパクトを市場に与える筈だがそれをしない理由は何か。 一つには、アップルは既に電話領域にまで踏み込み、電話の屋内・屋外の壁を一気に取り払い、パソコンの基本機能を搭載し、メディアプレーヤー機能も載せて、映像も写し、謂わば予てより言われている、いろいろな意味合いに於ける、”コンバージェンス”を既にかなり実現しつつあるiPhone、これを継続的に進化させてゆく海図を持って自らの主導でOSのみならずアプリケーションの基本部分までも、開発を制御しようとしている、そして二つには、その海図通りに進む為にも、海(市場)を穏やかにアップル号の進むとおりの海路を確保する為に、大多数を占めるWindowsユーザを引き込む手段としてWindowsとの整合性を無償で供与したという事ではないかと思われる。

では、そのアップル海図上の新天地は何か・・・現在透視しうる範囲、即ち、(1)声・データ・映像の統合、(2)固定電話・携帯電話・ネット電話の統合、(3)通信・放送の統合、(4)アプリケーション・コンテンツへのアクセス或いは統合、といった視点から考えて見ると、(1)、(2)、(3)は、未完成ながらほぼ道筋はついたと思われる。 後は(4)をどうするかということだろう。 Googleが狙うサーバーベースのアプリケーションの提供まで、アップルが踏み込むのか疑問はあるが、この辺りのことを考慮すると、おいそれとはOSのインターフェースをオープンにする事はやりたくないのかもしれない。

私個人は、アップルの取る閉鎖的なOSアプローチは、情報通信の将来を考えるときに、正しいアプローチとは思えないが、ハードとソフトの双方を自らの支配下に置く、それも時代をリードするハードとソフト、iTunesのようなビジネスもモデルで時代をリードしている、アップルに当面分がありそうな感じがする。 マイクロソフトも、従来型のOSではなく、相当思い切った操作性の良いOSを開発していると思われるが、アップルに仕掛けられた今回のゲームは、面と時間を買うべくPCメーカとの連合を組まざるを得ないほど、追い込まれている事には違いは無い。

今回のアップルのようにWindows とのインターフェースを、相手陣地内で与えるという、謂わば、開放戦略との合わせ技の如き戦略の行方を見守るのは、わくわくするほど面白い。 

この文章の草稿を書き終わった直後に、6月29日(日本時間6月30日)iPhoneが発売された。 発売日前後の種々メディアの報道が又面白い。 次回のブログではiPhoneの凄さをもう少し掘り下げてみたい。

平成19年7月4日