2011年11月12日土曜日

総合知の活用で活力ある社会を実現

先日、私が所属する非営利団体の一分科会が、今後の日本をどうするべきか、提言書を纏めた。その全文をこのブログに掲載する訳にはいかないが、ICTの切り口からどの様なことが出来るのか、近未来にありうる情景を短編小話風に書いてみた部分を以下に転載する。尚、提言書全文は、南山会分科会ファイルに収められている。

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<総合知の活用で活力ある社会を実現>

ITバブルの崩壊で明けた21世紀であるが、IT(情報技術)の進歩は止まるところを知らない。それが真価を発揮するには、通信インフラが欠かせないが、東日本大震災で壊滅的被害を受けた通信設備も、電話や光回線等、基本部分は僅か2ヶ月足らずで復旧した。今後の復興過程では、更に堅牢で高機能な通信インフラが整備されていくに違いない。

ITで様々なものが繋がる巨大なネットワーク、そこには、広大な情報、知恵、多様な文化を持つ人々が存在する。今後、ネット上の情報発信者の数は急増するだろう。そして、発信される情報間の相互作用が始まると、とてつもなく大きな総合知、創造知が生まれる可能性がある。

我国発展の源泉は、従来もこれからも優れた人的資源と豊かな技術力である。ITネットワークは、そのパワーを増幅し日本国民が活躍する場を提供してくれる。今や携帯電話は一人に一台、しかも猛烈な勢いでスマートフォンが普及している。子供から老人までがネットにアクセスする時代であり、ITに対する日本人の親和性は非常に強い。日本人の特質とされる高い受容性と応用能力に、東北人独特の粘り強さが相まって、ITを高度かつ広範囲に適用すれば、被災地東北は以前より遥かに強くなり得るのである。今こそ、その潜在力を活用すべき時であり、それを為さねば彼我の競争力には大きな差がつき、我国は国際社会において著しく後れを取ることになるかもしれない。

我々はそのように考え、ここにITがもたらす総合知を活用する為の、斬新な発想のアプリケーションの開発とその実証実験の実施を提言したい。最新ITの活用が被災地復興・強化の一助となり、未来志向の産業のあり方を確立、魅力ある雇用を創出し大都市へ流出した労働人口を呼び戻し、新しい社会の創生を可能にする。それを範として我国全体に拡大適用し、活力に溢れ国際競争力と影響力のある国造りに繋げて行きたいと考えるのである。

ITバブルの崩壊で明けた21世紀であるが、IT(情報技術)の進歩は止まるところを知らない。それが真価を発揮するには、通信インフラが欠かせないが、東日本大震災で壊滅的被害を受けた通信設備も、電話や光回線等、基本部分は僅か2ヶ月足らずで復旧した。今後の復興過程では、更に堅牢で高機能な通信インフラが整備されていくに違いない。

ITで様々なものが繋がる巨大なネットワーク、そこには、広大な情報、知恵、多様な文化を持つ人々が存在する。今後、ネット上の情報発信者の数は急増するだろう。そして、発信される情報間の相互作用が始まると、とてつもなく大きな総合知、創造知が生まれる可能性がある。

我国発展の源泉は、従来もこれからも優れた人的資源と豊かな技術力である。ITネットワークは、そのパワーを増幅し日本国民が活躍する場を提供してくれる。今や携帯電話は一人に一台、しかも猛烈な勢いでスマートフォンが普及している。子供から老人までがネットにアクセスする時代であり、ITに対する日本人の親和性は非常に強い。日本人の特質とされる高い受容性と応用能力に、東北人独特の粘り強さが相まって、ITを高度かつ広範囲に適用すれば、被災地東北は以前より遥かに強くなり得るのである。今こそ、その潜在力を活用すべき時であり、それを為さねば彼我の競争力には大きな差がつき、我国は国際社会において著しく後れを取ることになるかもしれない。

我々はそのように考え、ここにITがもたらす総合知を活用する為の、斬新な発想のアプリケーションの開発とその実証実験の実施を提言したい。最新ITの活用が被災地復興・強化の一助となり、未来志向の産業のあり方を確立、魅力ある雇用を創出し大都市へ流出した労働人口を呼び戻し、新しい社会の創生を可能にする。それを範として我国全体に拡大適用し、活力に溢れ国際競争力と影響力のある国造りに繋げて行きたいと考えるのである。

1.連携するモノづくり中小企業

その将来の姿を語ると次のようになる。2012311日、東日本大震災の一周年慰霊祭が行われたその日、東北ソーシャル・ビジネス・プラットフォーム(SBP)の組織は誕生した。SBPは、東日本大震災の復興基本方針が具体化される過程で設立された、被災地の中小モノづくり企業再建の切り札で、未来志向的なビジネス基盤(プラットフォーム)である。東北州の民間企業群が65%、州や自治体等の行政機関が35%を出資、5年後の100%民営化を前提とする。アプリケーションは、宮城県内の産学協同で開発された。SBPの運営が軌道に乗った2015年時点で、州内モノづくり中小企業群、大学、公益法人等、約1000法人が参加している。SBPを通じて様々な企業がプロジェクト毎に入れ替わり、そのネットワーク上の総合知を活用し柔軟に協業しつつ、顧客要求に応え、或いは新規市場を創造する様な斬新なアイディア、技術、製品を生み出し続けている。幅広く層の厚いモノづくり中小企業群が中核をなす日本なればこそ出来る仕組みだ。この形態は、日本全国に広がりをみせつつあり、我国の中小モノづくり企業群の国際競争力強化に大きく貢献しつつある。

2015年のある日、SBPに参加する宮城県仙台市のロボット技術専門商社A社のパソコンにビデオメッセージが届く。欧州の医療・リハビリセンターMからだ。相手は英語で話すが此方には、英語による文章と共に日本語の音声が伝わる。SBPサーバーが90%の精度で音声を自動翻訳してくれるからだ。Mの依頼は、肢体不自由者が他人の手を借りずに移動するための介助ロボットを作ってほしいとのこと。つまり、ベッドに横たわっている人の意思に従い、その体を起こし望みの場所へ運ぶロボットを、音声か脳波で制御することが必要だ。A社は、SBP参加メンバーの中でMの依頼に関心を示しそうな企業や大学、研究機関に打診、10数組が手を挙げた。A社は、早速手を挙げた総ての組織に、SBP上でMの求める製品の概略仕様説明を行った。SBP上ではテレビ電話会議、ホワイトボード、マルチタッチスクリーン等様々な機能を使えるので実際の会議と殆ど違いは無い。説明を終え、その後10法人の参加を確認、その中には脳波制御技術(BMI:ブレイン・マシン・インターフェイス)を有するR社も入っている。A社は、開発・製造プロジェクトチームの取り纏め役と、提案書の作成を行うことになる。

数週間後、A社が纏めた提案書をMに提出。ベッドから人を車椅子に乗せるまでを人型ロボットに、移動は自動式車椅子を使うという安全性への配慮と、ロボットと車椅子の制御に音声とBMIの双方を装備したきめ細やかな提案は高く評価された。いよいよ新型介助ロボットの製作開始である。開発、試作、本格製造、検査などの全体工程管理は、SBP上のプロジェクト管理センターで行われ、進捗状況は発注者を含み逐次総ての参加企業に公開される。

紆余曲折を経て半年後、音声・脳波制御による人型介助ロボットと自動式車椅子10台が無事Mに納入された。可愛い形の力持ち人型ロボット、軽量、頑丈で美しい形と色の車椅子は日本のモノづくりの真骨頂。Mが絶賛したのは云うまでもない。このプロジェクトに参加した企業や法人は、必要に応じて直接会う事はあるが、通常業務はSBP上で協議・協業を重ねてプロジェクトを進めてきた。Mによる試作品評価など、顧客を交えた全体会議も同時通訳機能の備わるSBP上で行われた。

東北SBPは、近く東北州外や海外のモノづくり中小企業の参加も呼びかけて行くという。10年後には、世界をリードするモノづくりのテクニカル・センターになっているだろう。

2.創造知の発信基地

“東北州を世界のイノベーション基地に”を合言葉に、州内産学連合を核にして始まった東北ソーシャル・イノベーション・プラットフォーム(SIP)、そこでは常に新しい技術、ビジネスのアイディアが飛び交う。簡単な会員登録で世界中の誰でも参加できる。共通言語は英語だが、日本語で入力或いは会話をしてもSIP上の“通訳”が英語に翻訳してくれる。プラットフォーム上の特別会議室では、気の合う仲間が新技術による事業計画を練っている。毎年春秋二回、仙台で開催される「新技術コンテスト」で優勝を狙っているらしい。

20164月半ば過ぎ、仙台国際センターの大ホールで行われている「新技術コンテスト」の最終選考会、1000席は総て埋まり、会場内は熱気に溢れている。SIPを通じて世界から寄せられた独創的なアイディアが、SIP上での二度にわたる予選を勝ち抜き、今30組が優勝を競う。審査員も国際色豊か、地元の大学教授、シリコンバレーのベンチャー・キャピタリスト、大手企業研究所長など多彩だ。

持ち時間15分のプレゼンテーション、既に29組が終わり最後の組が試作品らしい電子ペンを片手に熱弁をふるっている。「学生が、講義のノートを取りながら先生の声を丸ごと録音、自分のパソコンに無線で転送できます。ノートを見ながら復習する時、電子ペンでノート上の自筆文字を指すとその時点の先生の話を再生できます。このペンには大容量画像認識機能が有る為、記録紙の質は一切問いません。」 何やら面白そうだが、目標価格も手頃な範囲に収まるらしい。

いよいよ最終選考結果の発表、その様子はSIP上で同時中継されていて世界中どこからでもパソコンや携帯端末で観戦可能である。最優秀賞は、文字を読み声を発し言葉を学習するロボット、音声は限りなく肉声に近い。自分で考える力もあり分らないことは聞いてくるだけでなく、インターネットを介して答えを見つけてくる。受け付けや介護用、読書、検索用等以外にも、応用範囲はかなり広そうだ。準優勝は先の電子ペン、10位まで優秀賞が発表された。他の20組には順位はつかず、一律にSIP入選組として登録される。後に、上位10組までは、ほぼ自動的に複数のベンチャー・キャピタリスト等から、事業化までに必要な資金と人的支援が約束され、更にそれがSBP会員企業によって試作されることもある。本日のプレゼンテーションの模様は、総てSIP上のアーカイブスに残されるので、他の入選20組も後日様々な企業からの協業の申し入れや商品化支援などを受けやすい。2015年春から始まった催しだが、創造知の発信基地として世界的な地位を確立して行くものと期待したい。

3.遠隔ホームドクター

20157月、定年退職した中村は迷っていた。若い頃から、「仕事を辞めたら生まれ故郷の山形県酒田市に住もう。新鮮な食材も豊富、昔の仲間もいるし田園風景の中で暮らしたいね。」と妻と語り合っていたが、今は持病を抱え東京を離れることに不安がある。病歴ばかりか自分の体に関する総てのデータが都内のK病院にある。中村は10年以上付き合いのあるK病院の担当医Sに相談した。

S医師は、笑みを浮かべて「中村さん、そんな心配は全くありませんよ。酒田市ですか。あそこには大きな病院もあるし。中村さんは東北ソーシャル・メディカル・プラットフォーム(SMP)をご存じないですか? 東日本大震災復興計画の一環で、岩手、宮城、福島の被災地域を特区として始まった試みですが、今では東北州全域の病院、診療所と薬局をネットワークで繋いでいます。K病院も含む東京の多くの病院も東北SMPに繋がっています。そこには患者の社会保障番号で管理された病歴、カルテ情報等、医療に必要な総ての情報が保管されています。酒田市の病院に行かれると中村さんを診察する医師は直ぐにSMP上の医療情報にアクセスできるので、余計な初診検査も必要なく、直ぐに現在の治療を継続できますよ。若しどうしても心配で私に相談なさりたい時には、ご自宅のテレビ画面かパソコンから予約を入れて頂ければ、SMP上のテレビ電話機能を用いて直接話をしながら私の診察を受けることも可能です。お望みなら、私がSMPを通じて遠隔診療をしながら必要な検査を酒田の病院で済ませることも可能です。勿論薬剤処方も此方で出して酒田市内の薬局から配送してもらう事も可能です。」と。S医師は更につづけて、「中村さんの血圧や心拍数位の簡単なデータであれば、指定機器をご自宅に置いて頂くだけで、その測定器から直接SMPを介して中村さんのカルテ情報に記録して行くことも可能です。」

中村が、その後酒田移住の準備を始めたのは云うまでもない。東北SMPのアプリケーションは、東北州政府と医師会が推進母体となり、SBPを開発したと同じ産学共同グループに東北の医科大学が加わり開発された。SMPは個人の医療情報を扱う為、2015年時点の最高度の堅牢性と安全性を確保しているが、患者自身の了解が無い限り、医師は患者のカルテや診療履歴情報をSMPに保管する事は出来ない。患者自身も所定の手続きを経て、自分の情報を閲覧できる。診療費の決済もSMPで瞬時に行われる。

. 知の結集により新たな時代へ

以上は、ソーシャル・プラットフォーム(SP)が、日本人の日常生活を支えるインフラの一部となってきた近未来の情景寸描である。SP上で様々なものが繋がり総合知や創造知が醸成され、繋がるもの同士の距離と時間も一挙に短縮する。SPの有する可能性や応用範囲は非常に広い。

1990年以降、「失われた20年」と言われているが、それは日本が新たな時代を形成する為に必要な歳月であり、次の時代に向けた「知」を育んできた期間であったと考えたい。東日本大震災の復興を契機に、被災地を中心にその「知」を用い、SPにより未来志向的に再建し、それが新たな発展へ向かうエンジンになり得ることを実証したいと考える。東北州は、IT活用による日本活性化のモデルとなるのである。SPの裾野は被災地から東北州全域へ広がり、更に我国全体をその領域に巻き込んで、新しい社会の創生へ繋がっていくことになるだろう。

(齋藤彰夫 & これから会監修)


11/12/11

2011年11月2日水曜日

日本の技術力

 昨日111日のWeb日本経済新聞では「日本企業の衰退、問題は円高にあらず 」と題して、過去の成功体験に拘り続ける我国モノづくり大手企業に関して論じている。 WebWIREDは、iPhon4Sに搭載された新しいアプリケーション「Siri」についてその使用感を述べている。 一見全く異なる視点の内容だが、何時もながら、そこに彼我の差を感じてしまう。

 前者の日経記事を読んでいて、正にその通りであると思う。 米国では何故次々と新しい技術や製品が世に出てくるのだろうか。 我国大手企業経営者には過去の成功体験から、若手が考える新たな発想を摘み取ってしまうのではないか。 我国の技術者に創造性が欠落している等という事は決して無いと思うが、その場を与えられていない。

 リスクはあるが人々の生活を変えるほどのインパクトのある製品開発に挑戦する事が出来る場をどの様に構築するのか。 我国の現状を考えると実現への道のりは遠く、多くの障害を乗り越えて行かねばならない。 今始められる事は何か、中長期的に為すべき事は、それらをすべて洗い出して、同時並行的に今なすべきこと、出来ることに着手して行かねばならない。

 上述の「Siri」は、最近はやりの言葉で言うところのGame Changerとなりそうだ。 音声で操作できるパソコン、携帯PC、そしてそれらが何れは話し相手にもなる可能性さえ有りそうだ。 何やら少し気味悪くもなるが、間違えなく、人の生活を変える有効な手段となるだろう。

11/2/11