「米シリコンバレーに今後5年で起業家1000人規模派遣へ 経産省」の文字が幾つかの大手ネットメディアで踊ります。例えば、7月28日付日本経済新聞電子版には、「訪米中の萩生田光一経済産業相は27日(日本時間28日)、米シリコンバレーでグーグル本社などを視察し、『えりすぐりの挑戦者をシリコンバレーに派遣するプロジェクトを抜本的に拡充する。』と表明した。現在の年20人規模から10倍にし、5年で計1000人をめざす。」とありました。 この萩生田大臣(当時)の発言は、2015年4月30日-5月1日にシリコンバレーを訪れた安倍首相(当時)が同地で述べた「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」を更に前進させるものなのでしょう。 シリコンバレーに日本の起業家や中小企業人を送り込むという話はそれなりに衝撃的な内容であるためその都度比較的大きな話題になります。
しかしどうでしょうか。我が国では随分前からシリコンバレーへ人を送ってきており(主に大企業からの派遣だと思いますが)、すでに同地のカルチャーや企業手法とそのスピード感を知る人材は我が国にも多く存在していると思います。政府主導の国家プロジェクトとして1000人規模で人をシリコンバレーへ送ることに反対するつもりはありませんが、ぼつぼつ工夫が必要なのではないかと思います。例えば、派遣するならシリコンバレーだけではなく、イスラエルやフィンランドなどのベンチャー企業を多く生み出す国々を知る人材を増やすことも重要でしょう。又、単なる派遣だけではなく、日本で起業家が育つ環境づくりや支援方法を構築する必要もあるでしょう。併せて、最近減少傾向にある海外留学生を増やすことも早急に手を打つべきだと思います。
シリコンバレーというとすぐベンチャー企業、起業家という話になりがちですが、我が国の在来中小企業の中には欧米をしのぐ実力で高品質のものを素早く製造する企業も多くあります。しかし最近は、急激な原材料価格の高騰、資金繰り問題、後継者問題など様々な理由で事業撤退あるいは海外企業へ事業を売却するなどのケースが散見され誠に残念に思います。これらの企業を支援しつつ彼らが築き上げた優れた技術を更に磨き上げ永続できるような支援もあってよいのではないかと思います。例えば、下請的地位からの脱却を図る自立支援、資金や市場開拓面における支援、国の内外を問わず優秀な人材が携わりやすくするための支援、あるいは、これから発展していくであろう国々へ日本流のきめ細かな製造技術を広めていくための支援などなどが脳裏に浮かびます。
今回の経済産業大臣シリコンバレー訪問の報道に接し、シリコンバレーの力を再認識しつつも、日本を元気にするにはもう少しインパクトがあり、日本でなければできないことがあるとの思いに駆られました。
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